「ワンワンッワンワンッ」
「どうしたの〜みんな?」
おかしいな、皆が一斉に同じ方向を向いて吼えている。
普段は大人しくて吼えないような子まで吼えてる所を見るとただ事じゃないみだいだ。
「むこうって・・・・その茂み?」
犬たちは、茂みの前で私をじっと見つめている。
茂みの向こうを覗いた私は
「なっ!?」
思わず叫び声を上げた。
そこには、自分と同い年位の男女が血に染まった服を着て倒れていた。
「ちょ、ちょっとアンタたち!?何でこんな所にこんな格好で・・・!!!っああもう!!!鮫島!鮫島!!早く来なさい!緊急事態よ!!!」
「どうしましたか?アリサお嬢様」
執事の鮫島は私の普段と違う声に駆け足で駆けつける。
「怪我人よ。すぐに医務室へ!」
「!!・・・はっ!!」
血まみれの二人を見て表情をゆがめた鮫島だが、すぐに行動に映す。無線を通して連絡を入れる。
なんて事だろう・・・・。なんで私の家の庭に?
自慢じゃないが、うちの家はセキュリティシステムは完備していて犬1匹入ったってすぐに気づけるようになっている。
見た感じ彼女たちは被害者のようだけど・・・・だとすると、二人は無意識中にここに運ばれた?どうやって侵入を?
私が色々と思案している間、鮫島は彼女等の身体を確かめて、ふぅと一息ついた。
「お嬢様、診た所外傷は見当たりません。血は服にだけのようです。ただ気絶しているようですな・・・・頭部を打っている可能性があるので、このまま迅速に医務室のベッドまで運びます」
「わかったわ、おねがい。今日は彼女等に付き添うから」
「今日は、お友達と約束があったのでは?」
「こっちの方が大切よ。なのはたちだって、事情を言えば納得してくれるわ」
そういうと鮫島はなぜかきょとんとした後微笑し
「かしこまりました。今日はお稽古の方もお休みの連絡を入れておきましょう」
そんなことを言った。まぁ、そうね。二人の様子が分からないままレッスンなんてやってらんないし。
「そうね、おねがい・・・・それじゃ、なのはにメール入れとかなくちゃ」
ちょっと、きゅうようが、できて、あそびに、いけなく、なりました、ごめんね・・・っと。
これでいいかな。うん、送信。
「お嬢様、お二人の搬送が完了しました。お部屋へ戻りましょう」
「そうね、この子達も、今日はもう充分散歩したし・・・・ってあれ?」
ちらりと見た茂みの中、彼女たちが倒れてた辺りに何か落ちている・・・・なんだろう?
「コレは・・・・銃?」
って言っても、おもちゃみたいね・・・・。銃口はあるけど弾を詰めるところなんてないし。
あとは、手紙と巾着袋も落ちていた。なんか巾着袋の中はジャラジャラなってるけど・・・・・。おはじきかな?
「どれどれ・・・・って、これ宝石じゃん!?」
そう、袋の中には10個くらいの宝石たちがジャラジャラ入っていた・・・。もしかして、宝石強盗とか?
いやいや、でもあれはおもちゃの銃だし・・・・それにだとしたら・・・いや、でも・・・・
「あ、そうだ。手紙に何か書いてあるかもしれないわね」
人の手紙を勝手に開けるのはどうかと思うけど、状況が状況だしね。あけさせて貰うわよ。
えっとなになに・・・・??
『ここに護身用のモノとある程度の資金を残す。うまく使って私を楽しませなさい。キシュア・ゼルレッチ』
・・・・よく分からなかった。だれよこの人は。つっか、楽しませろって何よソレ?
「お嬢様!!!」
鮫島が玄関先で私を呼ぶ・・・・そうね、とりあえず彼女らが目を覚ましたら色々聞いてみよう。
視界が開けてく。
天井には白い電球。回りも真っ白。小さな頃に見たことあるような場所。
その風景に
「あ、やっと目を覚ましたのね」
一人の知らない女の子がいた。
―認識した瞬間。俺は即座にベットから飛び降り距離をとる。
「きゃ!?」
少女は驚いたような声を上げた。その間に、スッと周りを見回して状況分析を開始する。
病院のような部屋。窓は一つ。かなり広い部屋だ。
自分が着ている病人用の服。知らぬ間に着替えさせられたのだろう。
ぽかんとした顔をする少女。金髪だが、中学生くらいだろうか?
自分の身体。外傷は無い。動けている以上縛られてもいない。体格は・・・・・はい?
「なんでさ」
何故か、中学生くらいの身体になっていた。
Lyrical/stay night
よし、ちょっとマテ。きちんと確かめよう。
自分の肩腕足顔などを触ってみる。やはり短い。
窓ガラスを覗いてみる。やはり幼い顔。
頬をつねってみる。やはり痛い。
「な、なにしてるのアンタ?」
金髪の少女は、おかしな物でも見るような顔をしてこっちを見ている。
・・・・・まず、一般人っぽいこの子に聞いてみるのも手かもしれない。
「えっと・・・・君、俺の体に何かした?」
「私じゃなくて、鮫島があなたの服を変えたわ。それ以外は何もしてないはずだけど?」
「ってゆうか、なんで俺はここに?」
「うちの庭で血まみれで倒れてたの。ただの気絶だったらしいだけどね」
「俺の身に、なにがあったんだ?」
「それはこっちがしたい質問よ!!」
最後の質問に少女は声を荒げた。どうやら彼女は本当に何も知らないようだ。
自分の真新しい記憶を遡ってみる。
いつもどおり、戦争地で人を助けていたら魔術教会がやってきて、そのあと聖堂教会も一緒になって、凛と一緒に・・・って
「凛!!そうだ、凛はどこに!?」
そう、その後俺たちは聖堂教会にやられて一緒に息絶えたはず。
常に俺の横にいてくれた彼女がいないことに俺は焦りを覚えた。
「落ち着きなさいよ!リンって、隣にいた女の子の事?そこならそっちの仕切りの奥にいるわよ!」
入り口の横にあるカーテンで仕切られた一角。俺はそれを開けた。
そこには、見覚えのあるツインテールの髪、見覚えのあるきりっとした目、見覚えのある寝顔。
しかしやはり、中学生くらいの遠坂凛がいた。
「・・・・・なんでさ?」
「彼女もあなたと一緒に気絶してたわ。命に別状はないし、そのうち目を覚ますでしょ・・・その前に」
「ん?」
俺の隣に歩いてきた少女は俺の顔を覗き込む。
「アンタ、大丈夫?記憶喪失になってんの?」
少女は怪訝そうな顔で俺の顔を見る。俺が取り乱すから心配してくれたのだろう。
「いや、大丈夫だよ。色々あったからちょっと混乱してるのかな。落ち着いたら色々分かってくるさ」
うん、いい子だなこの子。頭を撫でようとしたがあまり背丈が変わらない子の頭を撫でるのも変な気がしたのでやめた。
「ん・・・・」
と、ベッドの中の凛がうめき声を上げる。どうやら目を覚ましたようだ。
少しずつ目を開ける凛。そして・・・・
「・・・・・・!!」
思い出したように布団からバッと降りて少女と距離をとる。が、
「はれ?士郎?」
俺の顔を見てぽかんとした。
「だから・・・なんなのよアンタたちは・・・・」
俺の横で、また同じような反応をされた少女は頭を抱えていた。
・・・なんつーか、すまんな。
「あんた・・・・士郎よね?」
凛が確かめるように俺に声をかける。混乱するのもしょうがない。
なにせ今は中学生くらいの体になってるのだから。
「あぁ、そうだぞ。相変わらす寝起きが悪いな、凛」
だから、できるだけいつも通りに声をかけて凛を安心させてあげる。
「・・・・今の状況は?」
部屋を一瞥しつつ表情を消して問う凛。
「場所時間ともに不明。この体の原因も不明。とりあえず、難は無いことは確かだ」
肩をすくめつつ答える俺に、とりあえず凛は一息をついた。
「そう・・・で、そこのあなたは?」
凛の言葉で、俺は少女へ顔を向ける。
・・・・・・あれ?なんか下うつむいて肩をプルプルさせてる?
やばい、なんか今までの経験がこの後の展開に危険信号を出している
「っなんなのよーあなた達はーー!!!!勝手に納得してないで私の話聞けぇぇぇぇ!!!!!」
どこぞの虎よろしく、咆哮を上げた。
キーンと響く声。あぁ、先に耳を塞いどいてよかった。
「凛、彼女は俺たちを助けてくれたらしいんだ。ここも彼女の家らしい。」
「そ、そう・・・・」
響いた声に、頭をクワンクワンさせながら凛は答えた。
「それで、えと・・・君の名前は?」
「アリサ・バニングスよ。」
「アリサちゃんか、可愛い名前だね」
「んな!?・・・そそんなことより、アンタたちは結局何なのよ!?今すぐ簡潔に説明しなさい!!」
そう言われ、凛と俺は目を合わせ―軽くうなずく
「俺の名前は衛宮 士郎。そっちは遠坂 凛」
俺がそう言うと凛は、
「とりあえず、私たちも現状を知りたいの。こちらのことも話すからそちらのことも教えてくださらない?」
そう、2桁くらい猫の皮をかぶった笑顔で問うていた。
「そう・・・・こちらの今おかれている状況は大体分かったわ」
眉間にしわを寄せつつため息混じりに答える凛。
「いや、私のほうは何も理解してないから。こっちは聞かれたこと一通り答えたんだから今度はそっちが答えてよね」
アリサにそう言われ、士郎と凛は「さて、どうしようか」と思案する。
士郎たちはアリサの話と、アリサ曰く「凛の傍に落ちていた」という手紙をみて大方の状況を把握した。
実はあの手紙は、本当はあの一文だけではなかった。あの手紙は魔力によるあぶり出しができる隠書だったのだ。
そこには
『わしを楽しませてくれた礼に、お主らにプレゼントだ。この次元で好きなように生きるがよい。』
というのがあった。
(つまり、私たちは魔導元師によってこの世界に送られたのね・・・・。理由は考えるだけ心の贅肉。この体は、コレだけ高性能な体ってことは多分青崎製。元の体は傷つきすぎて使えなくなった、か。そしてこの時空。私達のいた世界とあまり違いはないようね)
頭の中で情報を整理した凛はアリサの顔を見てもう一度考える。
(見たところ何も知らないただの少女みたいだし・・・・。適当に理由をつけておくか。)
遠坂 凛。かつては赤い悪魔と呼ばれた猫かぶりの天才である。
「アリサさん、説明ありがとう。今度はこちらの説明をするわ。」
そういいつつ、目の前に置かれた紅茶に一口つける。そして横にいる士郎に「まかせて」と目配せをする。
「私達、ある人たちに追われて逃げてきたの。彼らは私達に残された遺産、その宝石ね、それを狙ってるのよ。辛くも逃げ切ったんだけど、あなたの家の庭で力尽きちゃったって事」
「そ、そんなの・・・・・」
アリサは驚きに顔をゆがめた。そんなアリサに、凛はもう一押しと続ける。
「信じる信じないは、そちらに任せるわ。でもまぁ、当初の私達の状況を見ればわかるでしょう?」
「・・・・・・・警察には?」
「彼らは権力のある人間でね。もしかしたらそちらにももう手を回されてるかもしれないんだ・・・・」
アリサの言葉に、さらに付け足すように話す士郎。アリサは少し考えた後遠慮がちに聞く。
「誰なの?その人たちは・・・頑張って調べれば悪事の証拠が出せるかも・・・」
「ソレは教えられない」
「ど、どうして!?」
士郎の言葉に、机をバンと叩くアリサ。ソレをものともせず士郎はまだ言葉を続ける。
「君はただ単に俺たちを助けてくれた一般人だ。ソレを聞いたら君は俺たちの事情に巻き込まれる可能性がある。君にそんな危険な目を合わせるわけには行かない」
士郎の言葉は多分に本音が組み込まれていた。
世界が違うとはいえ、共通点はかなり多いようだし、もし魔術協会のような連中に自分らの存在が感づかれたら・・・。おそらく、この少女に迷惑をかける。それだけはしたくない。それが士郎の想いだった。
助けてくれたんだからなお更ね、と付け足す凛と、真っ直ぐな目をした士郎を見て、アリサは自分の心を決めた。
「わかったわ」
「そう、それじゃあ私達はこれで違う街に・・・・」
「貴方達の身柄は、このアリサ・バニングスが責任を持って保護します。もちろん、拒否権は無いわ」
「ってなんでさ!?」
このままこの街を出て行くつもりだった二人はその言葉に目を丸くする。
「そんな大変な状況にある人を、このまま見過ごせるわけ無いでしょう?あなたたちが必要以上の干渉を望まないのなら、詮索はしない。でも、ここで貴方達を放って何かあったら、私はきっと後悔する。だから貴方達の力になりたい。ハイ決定。逃げたら・・・わかってるわね?」
そのアリサのイイ笑顔に士郎は敗北を悟った。
(ダメだ・・・あの笑顔には勝ち目は無い)
誰かさんのあの笑顔に、散々振り回されてきた士郎にのみ理解できる。
あの笑顔の前には、理屈も、理論も、個人の自由もへたっくれもないのだ。
「わかった、ご好意に甘える事にするよ。でも、ここを放れなきゃいけない理由が出来たらだしてくれよ?」
「ちょ、ちょっと士郎!?」
その決定に、目を丸くする凛。士郎は肩をすくめてため息をつく。
「諦めろ、凛。だってコレは決定なんだからな」
「そう、分かればいいのよ。コレは決定なんだから。」
そうして結局、彼らは彼女の不器用な優しさに甘える事にしたのだった。
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と、途中書きなんかじゃないんだからね!
どうも、悲恋の吟遊詩人より改名した吟鳥です。
りりなのfateSS第三話。ようやくこれでfateが絡んできました。
まぁ、一番最初に絡んだのがアリサだったのはもちろん俺の趣味で(ry
最近、どうしても3者視点が書きにくくてたまらない・・・。
訓練がたりないな・・・・。やはり、最近は妄想の源であるアニメもあまり見て無いからなぁ・・・・。
少し旅に出て修行(ネットサーフィンで小説巡り)でもするかな?w
有言実行と企画倒れで二律背面な吟鳥でした。