小夜里「このSSは、前編、中篇を読んでからお読みください。一度呼んだ方でも、また内容を変えている可能性が多々あるので読んだ方がいいですよ〜・・・・って私はコレしか出ないんだろうなぁ・・・・・え?もうこのネタ二回目?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼方さん、それはこっちの方において」

 

「おう」

 

「彼方ちゃ〜ん、コレをそっちに持っていってくれる?」

 

「ん、ちょっと待ってくれ。これ運んだら行く」

 

日も上がりきり、それを鏡のように映す龍神湖のほとり。彼方達は三人で力を合わせ儀式の準備をしていた。

 

「ちがうぞ彼方さん、この神具はむこうだ」

 

「あ、すまん・・・・・」

 

三人で力を合わせ・・・・・・・・・・・

 

「彼方ちゃん、次はコレだよ〜」

 

「ちょっと待ってくれ、今行く」

 

三人で・・・・・・・・・・・

 

「彼方さん、コッチを先にやってくれ」

 

「彼方ちゃん、それの組み立て間違ってない?」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「お前ら、座ってないで手伝えよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

名残雪、そして初雪

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ彼方ちゃん。私と芽衣子はお風呂は入ってくるからね〜」

 

「覗きに来るなよ」

 

「誰が行くか!」

 

ハハハと笑い声を残して芽衣子は澄乃とともに室内の風呂に入りに行った。

 

儀式の準備は彼方一人でなんとかして日が沈む前に終わらせたのだ。

 

儀式は今日と明日の境目である真夜中に行うので、今のうちに龍神天守閣に戻り、食事と仮眠を取りにきたのである。

 

今日は風が強く、天候も少し悪くて冷えるし客もいないので、室内風呂ですますことにしたのだ。

 

「ふぅ・・・・・・」

 

2人が消えた後彼方はその場にバタッと仰向けに寝転んだ。

 

彼方は考えていた。今の自分ではない自分の事、今の澄乃ではない澄乃の事、今の龍神村ではない龍神村の事。

 

にわかに考えられないことだが、桜花のことや記憶の中の澄乃達四人の少女たちのことを考えれば納得もいくものであるのは彼方はわかっている。

 

そして、その少女たちを救いきれてないのなら、自分がそれを救うべきだということもわかっていた。

 

しかし、それとは逆にこの行動に疑問を持つ自分もいた。

 

他の運命を生きている自分はその世界で満足しているのでは?

 

一つになったら、今の世界は今のものではなくなってしまうのでは?

 

相反する自分。この行動を選ぶことによってきっと未来は大きく変わる。コトがコトだけに彼方は迷った。

 

話を聞いた時は即OKしたがそれは正しいことであるかを彼方はもう1度確認してみていた。

 

(運命を一つにするってコトは異世界の俺達を一つにするってことだよなぁ。っつーことは、その俺達はその俺たちじゃなくなって今の俺たちと一緒になってまた俺たちになって・・・・・あれ?あぁ・・・・もう・・・・な・・・んだか・・・・・ごちゃ・・・・・・・・ごちゃ・・・・・・・・に・・・・・)

 

が、考えがまとまらず彼方は唸りつつもそのまま思考とともに深く眠りに入り込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼方は目を開いた。そこには、永久の闇が広がっていた。

 

「・・・・・夢・・・・だな」

 

この感覚に襲われることが初めてではない彼方はココがどこかわかっていた。自分が眠りについた時だけ来れるあやふやで不確かでけれどよく知っている世界。

 

「明晰夢ってヤツだな」

 

「近いですが、ソレとは少し違うものですよ」

 

彼方がふとぼやいた独り言に返事が返ってくる。その声にも聞き覚えがある彼方はさして驚いた様子もなく振り返った。

 

「よぅ、あんたか。白桜」

 

「はい。始めまして、そしてお久しぶりです。彼方さん」

 

彼方によく似た男はそんな矛盾した挨拶を微笑みとともに返す。

 

「んで、ここに俺を呼んだんだから、なんか用があったんあだろう?」

 

「相変わらず、人の核心をきちんと突いた考えですね。えぇ、私は一つだけ質問をしたくて来たんですよ。」

 

白桜は深呼吸するように一息置いて静かな声で闇の中に声を放り出した。

 

「・・・・・・・・あなたはいいのですか?」

 

なにが、なんていう必要すらない。ようは、今の彼方の悩みを再度問いかけられただけだった。

 

「俺なりに頭をひねってみたんだがな。結局、答えは最初と一緒だ」

 

彼方はふぅと息を吐いてから宣言した。

 

「俺は、この世界のために運命を守る」

 

その言葉を聞き、白桜もふぅと息を吐いた。

 

「『世界(みんな)』のために『運命(自分)』を、ですか。貴方らしい言葉ですね」

 

「オマエも、同じ気持ちだろ?」

 

彼方は笑いながら聞いた。

 

「・・・・・・・・・・」

 

しかし、白桜は困ったように眉を下げるだけ。そして、ぼそりと言葉を吐いた。

 

「・・・私には・・・その資格がありませんよ」

 

その言葉は否定の言葉。自分は救わない、否、救えないという諦めの言葉。

 

「災厄の元凶である私には資格も実力もありません。私なんかが行動したら、龍神様や鳳仙、そして、菊花・・・いえ、澄乃さんに迷惑をかけるだけですよ」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

「ははは・・・おかしいですよね。全て自分の責任だってわかっているのに、その自分は他の人が責任を取ってくれるのを眺めているだけなんて・・・・」

 

「彼方さんには本当にご迷惑だと思っています。しかし、あの闇を打ち払う術を、私は持っていなかった」

 

「・・・・・・・・・」

 

彼方は、今の言葉で全てを悟った。この闇の空間、龍神村、そして呪いのことさえも。

 

だから、彼方は白桜の前まで歩いていき、そして一言、白桜に突きつけた。

 

 

「あんた、ドコまで勘違いで、疫病神なんだ?」

 

 

「え?」

 

と、白桜が答えた次の瞬間。

 

彼方は白桜を思いっっっっきり、ぶっ飛ばした。

 

「夢だからって痛みがないワケではないんだな。よかった、今の一発は相当痛くないと困る」

 

「な・・・なにを・・・・・・・」

 

後ろに倒れた白桜は痛みと混乱と疑問の入り交ざった顔をしながら言った。

 

「なにをするんだって顔だな。なら、もう少し分かりやすくいってやろうか?」

 

彼方は白桜の胸倉をつかんでこう言った。

 

 

「アンタは、どれだけ人を裏切り悲しませてんだ?」

 

 

その台詞に、白桜は言葉を失った。彼はいつも、人の期待にそえることに努力を重ねてきた男である。

 

そんな男がした裏切り。そんなもの、彼の中ではただ1つしかでてこない。

 

「・・・・・・・菊花・・・・・・・・」

 

バキッ

 

「0点。ふん、分からねぇみたいだな。じゃあ正解を教えてやる」

 

更に殴りとばした白桜を見ながら彼方は吐き捨てた。

 

「答えは、全員だ」

 

「しぐれも、旭も、菊花さんも、澄乃も、桜花も、芽衣子も、ついでに俺も村の人みんなも、あんたは裏切ったって言ってるんだよ!」

 

「おまえが菊花さんに恋をするのを防ぐために、しぐれはわざわざオマエに注意した。それなのにおまえは裏切った!」

 

「おまえが中途半端に情を移したから、旭はオマエの死に際に居れず、後悔して悲しんだ!」

 

「おまえが責任も持たず、子供を孕んだせいで、桜花は何百年も一人でいもしない両親を待ち続けた!」

 

「現世になったら、おまえが残した呪いを断ち切るために、違う運命の澄乃は報われずに死んでいった!」

 

「村の人はおまえの呪いの影響で悲恋を味わい、悲しんで生きてきた!」

 

「そして!芽衣子はオマエの呪いを解くためだけに!何百年と一人で苦しんで生きてきた!!」

 

「それでもおまえは!!他の人に迷惑をかけずに生きてきたと!!そう思ってるのか!!!!!」

 

永遠の闇の中、しかしその果てまで届くような怒声が鳴り響いた。

 

その怒声を浴びた一人の男は反論はできない。男自身で認めた罪を、さらに確認されただけだから。

 

しかし、同じ言葉でも湧き上がるものは違っていた。胸の中には、自責の念など消えていた。

 

そして、新しい感情をそのまま、吐き出すように、言葉にした。

 

「じゃあ・・・どうしろって言うんですか・・・・・!」

 

「過去に戻って、もう一回平和な世界を取り戻せとおっしゃるんですか!?ふざけないでください!そんな事ができたらとっくにやっています!」

 

「アナタは、私がどれだけみんなの幸せを望んだか知っているんですか!?自分の行いのせいで他の人達が傷つくのを、無関心に眺めていたとお思いですか!?」

 

「私の命を振り絞ったところで、こんなことするのが限界だったんですよ!!」

 

「私一人で、この闇に立ち向かうには、己の器が足りないんですよ!!!!!!」

 

憎悪のような叫びは闇に溶け込むように響く。その叫びに更なる叫びが重なる。

 

「何でそんなことがわかるんだよ!?テメーが生きてるんならまだ終わりじゃないだろ!!」

 

「死んでるくせに消えるのが怖いから危ない方法は取らない気か?!笑わせるな!!」

 

「そんなワケないでしょう!!自分が鳳仙やしぐれ様、菊花や今の世の皆さんににかけた迷惑を、どれだけ悔やんでいるか、アナタは知っているんですか!!!!」

 

「そこだよ。てめぇは、そこから間違えている」

 

いままでの喧騒を、一気に鎮め、彼方はまた闇に言葉を放る。

 

「なんで菊花さんのとの事を後悔してんだよ?」

 

「・・・・え・・・・・・・・・・」

 

白桜は彼方が何を言ってるのか理解できなかった。いや、していたかもしれない。なぜならそれは白桜が知っていても振り向かずにいていた真実だから。

 

「言葉通りだよ。なんで皆を裏切ってまで叶えたかった願いを悔やんだりなんかしてるんだよ?」

 

「アンタ、菊花さんと誓ったんだろ?何があってもたとえ罰を受けようともアナタを愛すって。なんでだよ?なんで今アンタはそれを悔やんでるんだよ?」

 

「テメェが消えないでいたのは、最初はそのためだったんだろ?何が何でも菊花さんと一緒に居たかったからだろ」

 

自分ではない自分の過去にある、つらい別れ。そのあとの心の虚空を、彼方は感覚で理解していた。

 

だからこそ、理解しているからこそ彼方は言葉を紡ぐ。

 

「でも、アンタは諦めた。それと同時に、自分がたてた誓いもさらりと破りやがった・・・・・・・!」

 

そして、彼方は再び声を荒げて闇の慟哭と化す。

 

「菊花さんが、自分の命そのものを賭けてまで守ろうとした誓いを、オマエのチンケな諦めの心によって崩されたんだ!」

 

 

闇が、揺れた。

 

 

まるで水面に落とした石が作る波紋のように。その風景が何を意味するかは白桜の顔が表していた。

 

色のない闇に映るその表情にある色は、

 

「あ・・・わ、私は・・・・・・・」

 

呪われたことを呪っていた人間の顔に写るのは、

 

ただの、後悔。

 

それを教え、その表情を読み取った彼方はさらに言葉を続ける。

 

今、正しい道を勧めるために、すべきこと。

 

「悔やんだ人間が、そのために出来ることを知っているか?」

 

「居るならば、誰でも出来ることだ。分かってるだろう?」

 

「これからは、自分でやるんだな。俺はもう行く。そろそろ目が覚めてくるみたいだし」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

白桜は返事を返さず、目を瞑り、一言だけ、本当に最後の疑問を消え逝く男に問う。

 

「それは・・・・・どんな大きな過ちをした者でも出来ることだと思いますか?」

 

その問いに彼方は軽く言葉を返す。

 

「あぁ、自分が悔いた分と同じくらい出来ればいいんだからな」

 

 

 

白く消え逝く彼方の視界の中、

 

 

 

 

 

一人の男の輝きある目が映り、

 

 

 

 

 

それがその男との最後の夢だった。

 

 

 

 

 

 

 

とちゅー書き。まだまだいくよ〜!

 

はい、どーも。いつでも言い訳三昧中華三昧でも辛いのは苦手な悲恋の吟遊詩人です。

 

やっとできましたね(他人事)、久しぶりの更新でかなりワクワクさん気分満開ですw

 

このSSを書くまで大変でしたよ〜。シナリオできてるので、あとは書く(うつ)だけなんですが・・・・どーも気が乗らなくてさ(ぉ

 

今回も、軽く謎解きを含んでますね。白桜の闇。呪い。その他の交錯。

 

すこし自分好みのシリアスっぽくできたので自分ではまぁまぁいいかと思ってます。

 

こんなペースの更新が、許されるこのHPで、これからも自己満足でのんびぃ〜り書いていこうかと思います。

 

それでは、光に浮かぶ白き闇。その結末をお楽しみに。ではではwww

 

おぉ、初めて自分で「お楽しみに」なんて言ったよ!www