身体は剣で出来ている

 

この身に刻んだその呪文は、俺そのものだった。

俺の魔術、俺の特性、俺の・・・人生すら。

そして、若きころに見たあの風景に俺は辿り着いた。辿り着いてしまった。

屍と武器が織り成す赤い丘。その頂上で、俺は空を見上げていた。

唯一つの違うのは、俺の隣に最愛の人が一緒に横たわっている事だろう。

俺らの身体はすでにボロクズ、剣一つ、ガンド一発もムリなほど魔力は酷渇している。

「凛・・・・・」

「なに?士郎」

「ごめんな、俺のせいでこんな事になって・・・・わかってたのに、避けようと思ったのに・・・でも」

「バカ、アンタをアイツみたいにさせないために私がいるんじゃない。アンタに、その心があるのなら私は充分なの」

そう言ってまだ微かに動く指で俺の指を掴む凛。すでに、体温が下がりつつあった。

「それでもゴメン。・・・・身体、動きそうか?」

「さすがにね・・・・まさか、魂へ直接攻撃されるとは思わなかったわ。ホントやってくれるわね、聖堂教会のやつら。次会ったらタダじゃおかないわ」

「ははっ、大変だなそりゃ。シエルさんを相手にしなくちゃいけないしなぁ」

「ふんっ、あんなカレー女なんてインドの奥地で野たれ死んでればいいのよ」

普通の会話、普通の時間。こんな時だからこそ、俺たちは普段と何も変わらない口調だった。

「・・・・・ねぇ、士郎」

「なんだ?」

「私、士郎が大好き。この世でもどの次元でも、今私の隣にいるアナタが好きよ」

「俺も大好きだよ、凛。俺のこの夢に、こんないいパートナーと歩めた事を幸せに思うよ」

幸せ。その言葉は俺から一番遠い言葉だっただろう。

俺のこの夢にはソレは不必要なモノだった。

だが、彼女はそんな俺を引っ張りまわして、そんな俺を変えてくれた。

俺は、アイツにはならない。だから・・・

「凛、俺は世界となんて契約しない」

「当たり前よ・・・・そんなモンして見なさい・・・・・過去に戻ってでも引っ叩くわ」

「うん、俺はアイツにはならない・・・・今の俺にはその夢と同じ位大切なものがあるから」

「同じ位、かぁ。惜しいなぁ、あとちょっとで一番になれたのに」

「ははは・・・・でも、俺の夢はコレで終わるけどさ、凛は、まだ一緒にいてくれるだろ?」

それは、一生言うつもりのなかったプロポーズの言葉。

俺の夢に巻き込みたくなくて、背を向けていた言葉。

「あたり、まえ、じゃない、あんたを、根源の果てまで支えるって、決めたん・・・だか・・・・ら・・・・・・」

「・・・・・凛?」

返事が無い、どうやら眠りについたらしい。

「まったく、こんな時に、寝ちゃうなんて・・・せっかくプロポーズしたのに・・・・あぁ、寝ろ寝ろ。明日になったら、ちゃんと、起こして、やるよ・・・」

あぁ、眠いなぁ。明日は凛を起こすんだから、もう寝なくちゃ。

おやすみ・・・・ありがとう、遠坂

 

「眠ったか・・・遠坂凛、そして衛宮士郎よ」

赤き丘に、紅い眼の老人と青い髪に燈色のピアスをつけた女性が降り立つ。

「彼女らですか?魔導元師」

「そうじゃ、手早く頼むぞ蒼崎よ。先ほどの計画通りにじゃ」

「魂の欠陥が診られますが・・・・身体が魂に与える影響をうまく使えばなんとかなるでしょう」

「うむ、元の体は報酬として受け取るがいい。固有結界で剣と化した身体と、第二魔法の影響を受けた身体じゃ」

「なるほど、それは上玉です。わかりました。私のできる限りの術を尽くしましょう」

そういって、女性はトランクの中から人の肉の固まりの様なものを取り出す。そして、自らの血でルーンの魔法を組む。

丘の上の光が収まり、彼女は自分の役目を終えた所で疑問を老人に問いかけた

「しかし・・・・なぜ彼らにこんな事を?」

老人は、長い顎鬚をさすりつつふむ、と頷く

「世界と契約する運命にあった人間が、ここにきて変わった。運命を変えた人間、そのような面白いものを見せてもらった礼、とでも言うかの」

「では、彼らはこの後・・・・・・」

「そうじゃ、ワシの力で別次元に送る。出来るだけ平和な世界へな。人を送るほどの穴は開けられんが魂と少量の肉のみならなんとかなるじゃろう。魔導元師の名に懸けて、できるだけすみやすい世界で、それなりの人生を過ごせるトコに送ろう」

そう言って老人−シュバイン・オーグ−は懐より宝石で出来た剣を取り出す。

「ふむ・・・・この世界でいいかの。二人の故郷に似ておるしな。あとは、護身程度にコレを持たせておくか。」

呟きつつ、異世界へのゲートを開く。後ろで女性−蒼崎 燈子−はほう、と眼を丸くする。

「この世界で、新たな道を探すもよし、己が意思を貫くもよし・・・・・また楽しませてくれよ二人とも」

 

そうして、丘の上には誰もいなくなった。

 

ここから、彼女らの人生が再び始まる。

 

 

 

 

 

 

Lyricalstay night

 

 

 

 

 

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あたま書き?

 

新しいSS、リリカルステイナイト、はじまります。

・・・・でも「なの」な題名はつけませんw

今回は珍しく構想が最後まで出来ているSSです(今までは5割くらいだったからw)

基本はfateの世界を混ぜつつなのはベースの設定です。

しかし、多少ご都合主義があるのはご愛嬌ということでwww黙認できる方のみお願いします。

さて、正義の味方の新たな人生の、始まり始まり・・・・・。