「これから君たちにやってもらうのは、分裂した魔獣の退治だ。力も分裂されているとはいえ、油断はしない方がいい。素体がSランクだからな」
モニターに映し出された画像には何体かの虎と竜が暴れまわっている。
「幸い、人の住まない地域だったから被害は植物だけだ。その地域までの転送はこちらで行う。指揮は僕がここで、エイミィは更なる魔獣の居場所の検索、ユーノは書庫で封印方法を探せ。君たち四人には、現場で魔獣の退治を行ってもらう」
『了解!』
クロノの指示を聞き、それぞれの方向へ歩みだす。
「それじゃユーノ君、また後で!」
「なのはたちも気を付けてね」
「主、ヴィータたちはどうしましょうか?」
「この4人なら増援は必要ないやろ、家で待機や」
「じゃあね、お兄ちゃん」
それぞれ言葉を残し、立ち去る。そして、クロノが立ち去ろうとした時
「・・・・・・・あれ?なにこれ?」
エイミィが困惑した声を上げた。
「どうした?なにか新しい障害が発生したのか?」
クロノはモニターを覗き込んだ。
「なっ・・・!?」
そして、驚愕した。モニターには海鳴市が写っている。
なんも変わりのない、いつもの海鳴市だ。
いつもの町並み、いつもの海、いつもの風景。いつもどおり人で賑わっていた。
そう、いつも通りなのだ。
「なんだ、この馬鹿でかい魔法陣は!?」
その上空に、巨大な魔法陣が描かれてなければ。
Lyrical/stay night
「何て大きさ・・・・ほぼ海鳴市全域と同じ大きさだよ!」
エイミィは更なる解析を始める。
「解析・・・完了!!なにこれ?!今まで見たことない魔法の種類だよ!!!ミッドでもベルカでもない・・・」
困惑の色を濃くするエイミィ。長年この仕事についてこんな事は初めてだったのだ。
しょうが無い事である。今まで見たことない巨大な力が目の前にあるのだ。多少の混乱は当たり前だ。
「待って、エイミィ!中心に何かあるぞ?これは・・・・空間のゆがみか?」
しかし、そこはさすが提督補佐のクロノ。冷静に画面に映し出される図の変化を読み取っていた。
「え?じゃあコレは・・・・・次元魔法?確かに似てるけど・・・・でも違う。どっちかって言うと次元断層におこる次元震に似ているような・・・・・」
次元震とは、膨大な空間干渉型の魔法が暴発した時に起こるある種の災害である。
「震」の文字通り、微少のものなら問題ないが、大きくなればその発生した空間を破壊するほどの災害。
それに似たものが、魔法陣で、つまり人為的に現れたという事だ。
「クロノ君!」
エイミィは指示を仰ぐべく、自分の同僚であり上司であるクロノのほうを向く。
「すぐに広域調査魔法を使える魔導師一団を配置。護衛と万が一に備えて、修復魔法の部隊も同時に起動さえるんだ」
「捜査スタッフ一団を現地に!一緒に災害補修の魔法を使えるものをできる限り準備させて移動準備を!捜査チームはギャレットの指示で動いて!」
そういってクロノは、先ほどなのは達が向かったドアへと向かう。
「クロノ君、なのはちゃんたちにこの事を?」
「いや、現場に行って総指揮を直接執る。事が事だしな。それと、なのは達にはまだ知らせないように。今は魔獣退治のほうが危険度の高い任務。こちらの事態が悪化した時には緊急で呼び出せる用意だけしておいて」
「了解・・・・クロノ」
そういって、エイミィはいつもとは違う呼び方で彼を呼ぶ。
二人の時だけの、秘密の呼び方。
「気を付けてね。ちゃんと帰ってくるんだよ?」
その言葉に、冷静な顔をしていたクロノの顔がすこしだけ温かくなる。
「あぁ、大丈夫。ちゃんと帰ってくるよ」
そう言って、彼は移動魔法陣の上に乗って消えていった。
「見つけた!!あの林を越えた草原に二匹とも争ってる!」
広い空から広域検索魔法を展開したはやての声を聞き、なのは達はその方向へ飛び立つ。
その言葉を聴いてなのは達は林の奥へと飛んでいく。
「周りには生き物の反応はないみたいやね、加減せぇへんでもOKやで!」
林を抜けたその先には2頭の獣、竜虎がまるで台風かなにかのような力を撒き散らしながら争っている。
「目標視認!いくよぉ、ディヴァイン・バスター!!!」
なのはの呪文と共に、桜色の光線が2体の魔獣に降り注ぐ。
魔獣たちは、それぞれ争いを止めその砲撃を避ける。しかしその先には
「とった・・・!!ライトニング・バインド!!!」
フェイトのバインドが仕掛けられていた。身動きを封じられる2体の魔獣。
「シグナムっ!!」
「レヴァンティン、カートリッジロード」
『Explosion.』
「紫電・・・・・・一閃!!!」
ズドォン!!
激突した炎がさらに激しい爆発を生む。
コレこそが剣の守護騎士の技。剣に纏った炎を相手に放つ火炎魔法。
コレをまともに喰らったら魔獣とはいえひとたまりもない。
[グギャァアアアア!!!]
しかし、魔獣は依然として我ここにありと咆哮をあげる。
「なんだと!?」
驚愕表情をするシグナムの横に、フェイトが飛行してくる。
「くっ・・・ごめん、シグナム。直前にバインドが壊された・・・なんて魔力なの・・・!!」
フェイトは悔しそうな顔で魔獣を見つめる。彼らの目標は今、自分たちに攻撃した二人にあった。
「2組に分かれて!なのはちゃんと私は竜の方を、シグナムとフェイトちゃんは虎の方を!」
「承知!テスタロッサ!やつらの分散を!」
「了解、バルディッシュ!」
『Photon lancer, ready』
「フォトンランサー、シュート!!」
電撃の槍の雨が、魔獣たちに降り注ぐ。
フェイトの狙い通り、魔獣たちはそれぞれ地と空に避けて攻撃を回避する。
それに合わせて、なのはとはやては空に浮かぶ竜の元へ飛ぶ。
地上にいる白銀に光る虎、レヴィの前に紫の騎士は剣をかまえる。
「レヴァンティン!」
『Yar!』
「飛竜・・・・・一閃!!!」
シグナムの剣から、鋭い太刀筋と一緒に紫炎がレヴィに向かって放たれる。
ドゴォ!!!という騒音。回避の体勢から立て直してなかったレヴィは直撃を食らった。
そう、直撃だった。しかしその白銀の毛並みには火傷一つついてない。
銀の魔獣は、その目を紫色に変えそれと同じ色の半円形のモノに包まれていた。
「まさか・・・AMF(魔法無効化領域)!?」
シグナムの炎をかき消したであろうその結界は、レヴィの目の色が元の紅に戻るとともに消え去った。
そして、その赤い目を地上にいるフェイトの方にむけ――魔方陣を展開する。
[ヒリュウ・・・・・イッセン!!]
「なっ!?」
向かってくる紫の炎に、フェイトは驚きで身を固めてしまった。
そして、それが防御魔法の発動をコンマで遅らせてしまった。
ズドォン!!
「うぐっ!!・・・・つぅ・・・」
かろうじて直撃をさけるフェイト。しかし、余波に弾き飛ばされて野を転がる。
爆風を食らったフェイトは、破れたバリアジャケットを修復しながら距離をとった。
その横に並ぶシグナムは、隙を見せずにフェイトに話しかける。
「大丈夫か、テスタロッサ」
「えぇ、なんとか。・・・それよりあの能力」
「あぁ、AMFじゃないな。かき消すのではなく吸収されたのか・・・・。」
「あれだと、私の雷撃もまずそうです・・・多少隙を作ってしまいますが、フィールド無力化魔法を」
「ふん、その必要はない」
魔法を展開しようとしたフェイトに、シグナムは剣を低めに構える。
「私がヤツの隙を作る。仕留められる一撃を用意しておけ」
有無をいわさず一歩前にでるシグナム。
反論しようとしたフェイトだが、シグナムがやると言ったからにはどうしようもない。
彼女の性格上、やると言ったからには曲げたりはしない事をフェイトは知っている。
そして、彼女の力が、それを可能に出来るという事もフェイトはわかっているのだ。
「バルディッシュ、ザンバーモード!」
『Yes, Sir』
鼈甲のような黒いフェイトの杖が、その体より大きな剣に変わる。
これがバルディッシュの攻撃型のフォーム。魔力により鍛えられたその刃は黄金の輝きを持って敵を威圧する。
二つの魔力の高まりに、白銀の虎はまたもその身に紫の結界を纏った。
「学習能力もなく、対応もワンパターン・・・・・所詮分身体か。」
燃えるような、しかしそれでいて冷えきるような殺意を相手に浴びせつつシグナムは薬莢を排出する。
そう、魔力による攻撃が効かないのなら、相手に魔力をぶつけなければいい事。
ならば、何をもって攻撃するか?
『Feuerauftrieb!(炎上爆破!)』
魔力の爆発で、シグナムの体はその脚力を二乗にあげる。
そして、その手には
「陣風・・・・・・炎舞!!」
己が心たる剣を、敵に向けてその身ごと斬りつける!!!
相手の陣地に入り、魔力を吸収される。が、
眼にも見えぬその移動は消されず、カマイタチとなりレヴィに襲い掛かった。
[グギャアァァアァAaaaa]
紫の弾丸のような斬撃をあびたレヴィは叫び声をあげ、紫の結界が割れる。そして
「雷光一閃、プラズマザンバー・・・・・!!」
その瞬間を、漆黒の雷神が見逃す道理はない!!!
「ブレイカー!!!!!」
黄金の雷撃は、まさに天災。その無限ともいえるエネルギーをフェイトはレヴィに叩き付けた。
未だ痛みに悶えているレヴィに向かい天罰の雷が辺りの林を根こそぎ蒸発させる!!!
[AAAAAaaa]
天罰の中で、獣は最後の咆哮をあげる。金色の大砲は、彼の体を容赦なく蝕む。
そして、その姿は雷撃の収束と共に、跡形もなく消えていた・・・・。
「やったか、テスタロッサ」
シグナムは、辺りを警戒しつつも剣を鞘に収めた。
「はい、確実にしとめました。この眼で確認済みです」
フェイトも切らした息を整えつつバルディッシュの刃を消す。
「ふむ・・・・そのようだ。では向こうの加勢に急ぐぞ」
「はい!」
『Axel Shooter』
「シュート!」
なのはの掛け声とともに、桜色の弾丸が竜の魔獣、ギルに向かい飛んでいく。
だが、そこはさすが竜の魔獣。蛇のような体を生かしつつ、攻撃を受けない最小限の動きで避けていく。
左右前後上下、その三次元の空間を鳥のように駆ける。
「今だよ!はやてちゃん!」
しかし、魔導師二人はそれをさらに一歩先を読んでいた。
「地より這い上がれ、監獄の檻。その闇は、すべてを裁くもの!出でよ、闇の黒檻!!」
『Dunkelheitskafig』
瞬間、空を駆けていた竜の姿がモノクロに変わり動きが止まる。否、姿だけではなく周り数メートルの景色もモノクロである。
ハヤテの空間制御魔法、闇の黒檻は相手ではなく、その場を止めるフィールド魔法。
故に、今回はいかに上級魔獣といえ反撃できなかった。竜のさらに上空に佇むハヤテはその銀十字の先端をギルに向けていた。
「なのはちゃん!!」
そして、はやてが声をかけた先には、なのはが大型収束砲撃魔法を形成している!!
「これで、とどめ!! スターライト・ブレイカー!!!」
先ほどよりも何倍も威力のある魔砲が、はやての結界もろとも魔獣に降り注ぐ。
そうして、魔獣の姿は跡形もなく消え去っていった・・・・。
「おーい、ふぇいとちゃーーん、シグナムぅ」
フェイトたちから少し離れた空からはやての声がした。
お互いに戦闘に集中している間、両方勝利を収めたらしい。
「・・・・どうやら、向こうも無事終わったようですね」
フェイトは手を振るはやてと、そのうしろにいるなのはを見てフッと笑った。
魔獣の消えたその丘に4人の魔導師は降り立つ。
「まさかこんなに苦労するとは・・・・」
「そやね、私もちょっと予想以上だったわ」
「フェイトちゃん、怪我は?」
「大丈夫、得にないよ」
それぞれに言葉を交わし、そして、魔獣がいた場所へ眼を向ける。
「跡形もなし、か。さすがなのはちゃんとフェイトちゃんやね♪」
「え、えっと・・・はやてちゃんの魔法も一緒だったからちょっと力はいっちゃって・・・・」
「シグナムが隙を作ってくれたし・・・私は最後の最後だけだよ」
「相変わらず謙遜だな・・・・さて、それではエイミィに報告して戻りましょう」
そう言って、アースラへと通信を繋げるシグナム。
「こちら騎士シグナム、魔獣討伐の任務ただ今終了しました。応答願います」
そういって、シグナムの耳に届いたのは
『あ、終わったのね!?よかった・・・みんな、急いで戻ってきて!緊急事態よ!』
困惑と焦りの混ざった、エイミィの声だった。
「どうしたん、エイミィさん。そんな慌てて・・・・何があったんや?」
『みんな、いますぐアースラに戻って!海鳴市で異常事態発生!』
「「「「!!?」」」」
四人とも、顔が一瞬にして強張った。
それぞれの頭に、その町に今もいる家族達の笑顔がよぎる。
『転送ゲートを開いたよ!早く!!』
その言葉と同時に、なのはたちの前には魔方陣が現れる。
「エイミィさん!!」
はやてが通信に向かって声をあげる。
そして、その体は魔方陣の光の中に消えていった。
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途中書きその2
どうも、受験期とかでもそんなの関係ねぇ状態な悲恋の吟遊詩人です。
次からようやくfateの人達の登場です。
ここらで、ちょいと設定を書いておきましょうかね。
なのは側
漫画の設定にのっとり、私立聖祥大付属中学校3年2組で15歳。
時空管理局武装隊の戦技教導官。訓練校はすでにちょっぱやで卒業。
なのはは例の事件の怪我を完治。
なのははエース、フェイトは執務官、はやては時空管理局特別捜査官。
まぁ簡単に言ってしまえば漫画時の話だと思ってくれて結構です。
漫画版の設定が分からない人はnanohawikiへGOです(投げやり
fate側
凛trueエンド後。
世界と契約しないまでも、正義の味方を続けている士郎。それに付き合いたまに抑止として動く凛。
シロウの剣製は、英雄王のをコピったので大体使える。姿はもうアーチャーのようになっていたが、今回は中学生時代の士郎そのものに戻る。
なのはの世界では、士郎たちの魔法を使える人がいないうえ、大源(空気中の魔力)が多いため、二人の魔術の威力が上がっています。
さて、こんなもんでしょうかね。
これからやっと本当のクロスオーバーが始まります。
なのはが好きな人もfateが好きな人も楽しめるように頑張ります。
努力が実ればいいですけどorz